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力「…そんなことがあったのか…」
俺は初めて祐の口から中学一年の県大会後に起こった出来事を聞いていた。
できることなら俺はもっと早い時点でそのことを聞きたかった。
そして水月もまた同じようにもっと早くにそれを聞いていたら祐を信じて待っていられたのかもしれない。
自分の過失で同じ部の女の先輩に怪我を負わせてしまい、その先輩が卒業するまで付き合わなければならなかったこと。
そして、祐のことが好きだったその先輩に水月の存在を気づかれてしまい、水月を守る為に、中学二年のあの県大会の時にやむなく彼女に冷たくするしかなかったこと。
力「だから、おまえはあの時、水月と会わないで帰ると言ってたのか。」
祐「ん…あの先輩、何するか分からないからさ。今さら弁解しても遅いけど、あの時はあーするしかなかったんだ。」
力「けど、もうその女と切れたんだろ?」
祐「あぁ。なんとかね。中学三年の時はそれでも学校に来たりしてたけどさ、さすがに市外の高校までは……ていうか、彼氏でも出来たんじゃないかな?結構、男好きそうだったし。」
確かにあの県大会の日に会ったあの女はスゲー大胆なヤツだった。
俺達の前で祐にキスをしていたくらいだし。
力「いるんじゃねーの?そんな一人の男に執着しそうなツラしてなかったぞ?」
祐「…クスッ……言うねぇ…力も。そうだね。いるよ、たぶん。俺、アイツには散々な目に合ったからね。強引だし、性欲ヒドいしさ…」
(…せ…性欲!?)
まさか祐の口からそんな言葉が飛び出すと思っていなかった俺は唖然とした。
力「…えっ……おまえ、まさか……その女…と?」
あんな女となんて考えたくもなかったが、俺は思わず祐に聞いてしまった。
祐「…仕方ないだろっ……愛梨に手を出されるよりはマシだよ…」
力「…ちょ……だからって……おまえ…」
いくら怪我を負わせてしまって付き合うことになったからといって、そこまでする必要なんてあったのだろうか。
けど、水月に手を出されるくらいならってことは、それほど祐は水月を守りたかったってことだ。
自分を犠牲にしてまでそんなことを――…
(俺なら絶対、無理だっ!)
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