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祐が水月に触れる時、水月は祐のその瞳に吸い込まれ、放っておいたら何もかも奪われそうな雰囲気だ。
長年想い続けた初恋の相手、一目惚れしたというほどの容姿。
その瞳に捕まるとどうしようもなくなるのは分からないでもない。
だけど、それだけじゃないような気がする。
水月の中に祐の存在がどこかにまだ恋心として残っているように俺には思える。
あの頃と変わらないまま――
それでも俺はその気持ちごと引き受けて、最後はその中から祐を追い出して俺だけで満たしてやろうと思っていた。
けど、それはやはり無理だったのだろうか。
力「つーか、おまえがそういう風に仕向けてるからだろ?」
祐「そんなことないよ。それに俺は愛梨にしかそんなことしないからね。仕向けるも何も……素直に俺が愛梨に接するから愛梨もまた素直に表現してくれてるだけじゃないの?」
力「けど、俺は水月をおまえに渡すつもりなんてねーからさ。まぁ、でも、おまえが俺に400で勝つことがあれば、話は別だけどな。つか、勝負しねーとかないからな?」
祐「え?力…?それ……」
さっきまでポーカーフェイスを保っていた祐の顔が一気に崩れた。
力「水月から聞いたよ。おまえ、あの話、撤回するとかって言ったんだってな?」
そのバカデカいグループの後継者の婚約者である水月を欲しいのならと、俺は祐に勝負を吹っ掛けられていた。
しかし、二週間も経たないうちに、いきなりその話は撤回。
祐は婚約を解消すると水月に告げた。
俺はそんな祐の言動がどうしても納得がいかなかった。
祐「…えっ……あ……うん……まぁ…こんな足だし、もう走れそうにもないしさ…」
そういうと、祐はちょっと苦笑いして、その包帯を巻かれた足を軽くトントンと叩いた。
俺はそんな平然と笑っている祐に腹が立った。
俺はそんな簡単に撤回できるような勝負を引き受けたつもりはなかった。
力「…祐……おまえの水月への想いはそんなものだったのかよっ…」
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