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祐「…力………」
力「おまえ、その足でアスリート目指すんだったんじゃねーのかよ…」
祐「…えっ……力、なんでそんなコト……」
力「んなこと、どうでもいいってんだよ。つーか、おまえにとって水月はそんな簡単に諦められるほど安い女だったのか?」
祐「…安いって……そんな訳ないだろっ…」
力「だったら!何であの日の約束をそんな簡単にやめたんだよ?俺はマジで受け止めていたんだぞ!何、勝手に棄権してんだよ?試合前に棄権なんて、負けを認めるのと同じじゃねーか!それともその試合、俺に勝てる気がしねーからか!?」
半ば挑発のような俺の言葉を祐はジッと聞いていた。
そして、その真剣な眼差しを俺へ向けて、
祐「力はさ……本気で俺に勝てると思ってたわけ?」
力「は?…なんだよ、それ……」
そして更に祐はニヤッと笑いながら、
祐「…勝てるはずないのにさ…クスッ…」
力「…は?なんだと?!」
冷静さを失いかけそうな俺に対し、祐は平然とした顔で話し続ける。
祐「…力……そんな簡単に俺に勝てるワケなんてないだろ?どれだけブランクがあると思ってんだよ?陸上をさ……400を甘く見過ぎだよ。悪いけど、あのまま勝負したって俺に勝てっこなかったよ、きっと。だから勝負しなくて良かったと俺は思うけど?」
祐の言ったことは冷静に考えると正しくないとはいえない。
現に俺にはかなりのブランクがある。
高校の全国レベルに匹敵する走りを俺が野球をしながらマスターするとなるとかなり大変で、普通なら無理だろう。
けど、それでも俺はどんなことをしてでも祐と同じ舞台に立ってやろうと思っていた。
それは水月を想う気持ちというのもあるが、祐のその挑戦は、祐なりの俺へ向けたメッセージなのだと俺は感じていたから。
俺が水月を任せられるヤツなのかどうか、その目でその走りで確かめたかったからこそ、祐は俺に挑戦してきた。
力「…祐……だったら……撤回する意味なんてなかっただろっ」
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