後悔と決断

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祐「力……ごめん……」 力「…祐…」 祐「ずっと……ずっとおまえは愛梨を守ってくれてたのに。俺、おまえに甘えてたんだ。俺が愛梨を傷つけてしまったあの日、勝手だけどおまえなら何とかしてくれるんじゃないかって。おまえなら俺の思いに気づいてくれるって…」 あの時の祐のその思いに全く気づかなかったわけじゃない。 けど、俺はそれを見て見ぬフリをしていたのかもしれない。 水月が欲しかったから。 力「…祐……俺だって最低だよ。おまえがあんな言い方を水月にするなんて絶対理由があるはずなのにさ。…俺さ、おまえ等二人のことを応援しながらも心のどこかでダメになって欲しいって思ってたのかもしんねぇわ…」 きっと俺の心の中のどこかで、そういう思いがあったからこそ、俺は祐のあの時の気持ちに気づこうとしなかったんじゃないかと。 力「俺は……水月への想いを止められなかったんだ。けどあの時、俺がおまえをもっと信じていれば……」 水月もまた俺と同じようなことを言っていた。 『自分が祐を裏切ったから』 彼女もまた祐を信じ切れず祐への想いを断ち切った。 そして俺もまた祐との築き上げたはずの友情を捨てた。 祐「力のせいじゃないだろ……何勝手に背負い込んでんだよ。それに……力から愛梨に告白したんじゃないんだろ?」 力「えっ…それ…」 祐「…ん…愛梨が言ってたよ。自分が告ったって。好きになったのは自分の方だってさ。」 力「水月が?」 祐「ん。真剣にはっきりと言うもんだからさ、まいったよ。力から愛梨に告ったんだったら簡単に奪い返せると思ってたんだけど、愛梨が力を好きになったってことならちょっと厄介だなって……」 そういうと祐は少し悲しそうに笑った。 祐「ホント、愛梨は力が好きでしょうがないってカンジだよ。ん、俺、思い知らされたんだよ。たぶん勝負して勝ったとしても、愛梨は俺の傍でずっと力を想い続けるんだろうなって。」 力「…祐…」 祐「それでもいつか俺の方に向かせてみせる、向かせられるって思ってたんだ。けどさ、あいつの瞳の奥にはずっと力がいて…」 水月の体に想いを刻み込んでも、彼女の心の中にいる俺の存在は消えることがない。 そのことを祐はあの日、目の当たりにしたのだろう。 だけど、それは俺も同じで―― 水月の心の中にまだ祐がいる。 水月は気づいていないのかもしれないが俺には分かる。 水月の祐に対する恋心は完全に消えてなんかいない。 そのことに、俺はどこかで気づいていたから、水月を何度抱いても不安が残っていたんだと思う。 もちろん水月の俺に対する想いも嘘じゃない。 けど、祐に対するその想いが残っているのは事実。 力「…悔しいけど、水月の中におまえがまだいるよ……」
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