後悔と決断

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口に出したくなかった言葉だった。 けど、俺は言うしかなかった。 それは俺達が前を向いて歩いていく為に必要な言葉だったから。 祐「…まさか……」 力「もちろん、水月が俺を想ってるってのも事実だろうけどさ。」 祐「なんだ……それ……どういう意味だよ?」 力「水月の中にはさ、おまえを好きだったあの頃の気持ちが置いてけぼりになってんだよ…」 想い続けた水月の祐への想いは再開のあの時までは間違いなく本物だった。 その後、水月は必死で祐への気持ちを封印して前を向いて歩いていこうとした。 忘れたくても忘れられないあの記憶――…… 当時、水月の祐への想いはとにかく強く深かった。 俺なんかに絶対に入り込めないほどのその想い。 俺は傍にいたからそれは嫌というほど理解っていた。 だからこそ俺は水月が俺の方を向いてくれたことが嬉しかった。 けど、それと同時に不安もいつも隣り合わせだった。 水月は行き場を失ったその想いをうまく処理できずに、傍にいた俺にそのまま寄り掛かかっただけなのでは…と。 確かに人は一人では生きていけない。 寄り掛からないとやっていけない時だってあるだろう。 もちろん、水月が俺のことを今好きだと言ってくれていることは嘘じゃないと思う。 けど、俺は水月が俺を好きだと言ってくれたあの日、俺達の始まりの底に祐がいたことに目を瞑り、前へ進み出したことが今となっては後悔せずにいられない。 俺はやっぱり水月の全てが欲しい。 カラダだけじゃなく、心も何もかも全てが。 水月の中にまだ眠っているだろうあの頃の祐に対する想いが完全になくならないとこれからだって何度あいつを抱いたってその不安は残るだろう。 力「時間を戻すことなんてできねーけど、水月の中におまえへの気持ちが残ったままなんて俺は嫌なんだよっ…」 祐にあのまま万が一のことがあったら、水月はその心の中に眠らせていた祐への想いがおそらく最大限に溢れ出してきてしまい、俺は手に負えなかったかもしれない。 そしてそれは一生水月の中で大きな傷として残るだろうと俺は思っていた。 そういう意味でも絶対に俺は祐には戻ってきて欲しいと願っていた。 絶対に祐に水月の想いを持っていかせたくなかった。
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