69人が本棚に入れています
本棚に追加
力「俺さ、ケリをつけさせてーんだ…」
祐「ケリ?」
力「俺は水月の全てが欲しいんだよ。カラダもだけど、心も全て何もかも…」
水月の心の奥底には間違いなくあの頃の祐への想いが眠っている。
祐「…クスッ……贅沢っていうか…欲張りっていうか。でもそれは男としての本音だね。好きな人の全てが欲しいって思うのは俺だって思うからさ……」
そう言う祐の瞳の奥にもまだ彼女への想いが宿っていて――
力「…祐……おまえ……まだ水月のことを?」
祐「…そんな簡単には……難しいだろうね…」
力「だよな。だったらさ……おまえ、その足早く治せよ。」
祐「え?」
力「おまえのその走りは水月への想いを語るはずのもんだったんだろ?だったら早くトラックに戻れよ。」
俺は祐には絶対にその足を治してもらって、またトラックで走る姿を見たいと思っている。
力「あのな、そんな中途半端に水月を想い続けられても困るんだよ。完全燃焼してねーんだろ?あいつへの気持ち……」
こんな終わり方で俺は祐にその走りを諦めて欲しくなかった。
祐「けど、俺はもう……」
祐はその吊るされた足に視線をやった。
力「んなもん、半年ありゃー治るだろ。やる気があるかねーかじゃねーのか?おまえはさ、そんなヘタレな男じゃなかったはずだぞ?」
西野に言われ続けたその言葉を俺はここぞとばかりに祐に投げつけた。
(ヘタレの俺が誰かにヘタレなんて言うなんて。しかもその相手が元親友とは……なんだか笑っちまうな…)
祐「そうだな。…ん……けど、俺さ、大泉グループの跡を継ぐって決めたんだよ。走ってる暇なんて……」
力「…クッ……残念だったな。跡を継ぐのはおまえの親父だよ。」
祐「えっ?それ…どういう……」
最初のコメントを投稿しよう!