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力「けど、おまえのその足、どれくらいで治るんだろうな?」
祐「どうだろうね。半年くらいじゃないかな。リハビリもあるからまともに走れるようになるには一年はかかるかも……」
一年となると長過ぎだ。
まぁ、それくらいかかっても仕方がないのかもしれないが。
それでも大泉グループのバックアップがあるだろうし、その総力をかけていけば完治はもっと早まるはず。
力「じゃぁ、半年で復帰できるよな。で、来年のインターハイで完全復帰ってことだ。」
祐「えぇっ…ちょっとそれは無理じゃ…」
力「こういうトキこそのバカデカいグループのチカラだっての。つーか、おまえが言わなくても周りがそうさせるだろーよ。」
あの祐の祖父さんが黙っている訳がない。
祐「…まぁ、そうかもしれないけど。けど、残念だったな。今年のインターハイはもう絶対に出場できないんだよね。ん……仕方ないから、俺、愛梨の応援でもしてるよ。」
力「そうだな。まぁ……水月の練習でも見てやってくれよ。予選は通過するだろうけどな。俺もこれから選手権の予選が始まるからこっちに帰って見てやれねーし……」
できることなら俺が手取り足取り教えてやりたかった。
だが、それは遠距離な俺達には難しい話。
祐「そうだね。愛梨は跳躍は問題ないけど、400はまだまだだからね。っていうか、力は二年なのにエースなんだよね。どうせ先輩達に遠慮なんて全然せずにやってんだろ?…クスッ…」
力「当然。遠慮なんかして池川のエースなんて務まらねーって。」
俺が登板することで最後の夏の試合に出られなくなった三年の先輩もいたりする。
けど、だからこそその先輩の為にも俺は後悔しない夏にしたいとも思っている。
もちろん水月との約束の為にも――…
力「ま、俺も忙しくなるからさ。その間はこっちに帰ってこれそうにないし、水月も淋しいだろうから、それまでだったら……あいつをおまえに貸してやるよ…」
祐「…貸してって……え……それって…?」
驚いた顔で俺の顔を見る祐。
俺はその秘めていた決意を伝えようとしていた。
今、俺ができる祐への精一杯を――…
力「ん、水月はさ、おまえのその足を早く治す為の最高な治療薬だろ?おそらくあいつもおまえのこと、気になって仕方ねーだろうし……特別許可してやるよ…」
本当は水月を祐の傍になんて置きたくない。
けど、祐のその足と胸の傷が塞がったとしても、それにかかるリハビリはかなり時間もかかる。
でもその時に、水月が傍で祐を支えてくれたら、どんなことがあっても祐はきっと諦めないだろうと俺は踏んでいる。
祐「…余裕だね。ん…そんなこと言っていいの?俺の傍に愛梨を置いておいたらもう二度と力のところに帰らなくなるんじゃない?…クスッ…」
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