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祐「…はー……もう力は勝手だよな、まいった。じゃぁ、遠慮なく愛梨はもらっておくよ、うん。」
祐がニヤリと俺を見て笑った。
(…は?『もらう』…って……)
力「おいっ!『もらう』じゃねーよ。『貸す』だけだって。『やる』わけじゃねーんだぞ!?誤解すんなっ!」
半年……いや、もしかしたら祐の復帰は一年かかるかもしれない。
けど、この期間は水月を完全に俺のものにする為に必要な期間でもあり――
一生のうちのたったその一瞬だけ――…
それで、ずっと水月が俺の方だけを見て傍にいてくれるのなら、俺はこの期間を耐えてみせる。
祐「…クスッ…冗談だって。でも、俺もさ、まだ愛梨のコト好きだし。ん…もし、傍にいる愛梨が俺のこと好きになってくれたらその時は遠慮しなくてもいいんだよね?」
力「えっ!?」
祐「だって、力言ってただろ?愛梨の中にまだ俺がいるってさ。あの頃の気持ちを思い出して俺のことを好きだと言ってくれたら……その時は俺はきっと愛梨を抱きしめて離さないと思うけど?」
その確率は全くないとは言えない。
力「…それは…仕方ねーかも…な……」
それは水月本人の問題だ。
祐を想う気持ちに完全に傾いてしまったのなら俺はそれを元に戻すことなどできない。
けど、そうならない為にも俺は彼女が欲しがるスゲー男になって帰ってくるつもりだ。
祐「そっかぁ。そこまで覚悟してるんだ。っていうか、それは自信あるからこその発言だね…クスッ…」
自信なんて本当は全然ない。
けど、あの日、俺が祐を信じきってやらなかったことを償えるのはもうこんなカタチでしかない。
そして、水月に対してもちゃんとケリをつけさせるのは、今彼氏である俺の役目でもあると思っている。
祐「…愛梨は……このコト知ってんの?」
そんなもの知っているわけがない。
だって俺が勝手に今、決めたことだから。
力「…いや……知らねーよ…」
祐「…やっぱりね。…ホント、力は勝手なヤツだな。ったく、そんな愛梨を物扱いして勝手に決めたこと分かったら……何て言うか…」
水月にこのことをそのまま全て伝えると、おそらくすぐには納得なんてしてくれないだろう。
『勝手に決めないで』とか『物扱いするなんて酷い』とか、大体言うことの想像はつく。
けど、これから俺が忙しいことは彼女も理解しているだろうし、もちろん水月も忙しくなるわけで――
ヘタにいろいろ言わなくても彼女は祐の傍にはいてやるだろうし、傍にいれば自分の本当の気持ちも気づくだろう。
そしてうまくいけばその奥底に眠る想いにもケリをつけられるだろう。
それに、最近の水月は考えられないくらい強くなった気がするから。
だから俺は大丈夫だと思っている。
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