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祐「黙って行く気じゃないだろうね?」
突然、祐がさっきよりトーンの落ちた声で俺に問いかけた。
祐は俺を真剣なまなざしで見ていた。
祐「…力……俺には偉そうなこと言って、おまえは逃げるのか?」
(逃げる?そんなつもりはない。ただ俺は…)
力「そうじゃない。」
水月にはただ笑っていて欲しいと俺は思っていた。
もし今回の俺の決断を彼女に言ったら彼女は泣くかもしれないし怒るかもしれない。
けど、きっと最後には『分かった』とも言ってくれると思う。
でも、それは彼女の本音じゃないだろう。
そして俺と離れている間、おそらくあいつは思い悩むのではないかと俺は思う。
俺を想って――…
でも、それじゃダメだ。
それじゃ、彼女の奥底に眠る祐への気持ちはきっと出てくることはないだろうし、ケリなんてつけられない。
ずっと傍であいつを見てきたからこそ分かるのだが、水月は思い込んだら突っ走るタイプだ。
祐を想っていた時もそうだったが、好きだと思ったらトコトン突き進み、その好きという想いをちゃんと伝えてくる。
あー見えてあいつは案外情熱的なヤツで――
力「…祐……おまえの完治は半年後……だよな?」
祐「えっ?」
力「だったらさ、俺、必要最低限なコトしか言わねーよ。いや、言うつもりはない。」
祐「…ちょ……力!?」
それじゃぁ、祐が納得できないのも分かる。
けど俺は――
力「俺はさ……あいつが笑っているのが好きなんだよ。」
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