その笑顔があれば

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祐「あれ?愛梨、どうしたの?」 愛「だ…だって……さっき、なんか大きな声が……力でしょ?…もう……病人に何したのっ?」 そういうと水月は俺の顔を見たかと思うとその手で俺の腕を軽く叩いた。 力「…いてっ……つーか、俺なんもしてねーって……なぁ?祐?」 俺は祐に同意を求めた。 しかし祐は思わぬ返答をして―― 祐「…やっぱり聞こえた?そうなんだよ。力のヤツさ、ここぞとばかりに俺を潰そうとしてさ。ん……俺に走れって言って無理矢理ベッドから下ろそうとするんだよ…」 (は?な……何だとぉ!?) 力「…お…おいっ……何言ってんだよ……んなことするワケねーだろっ!」 愛「…本当…なの?」 祐「…ん……無理だって言うのに……」 祐はまるで映画俳優並の迫真な演技で彼女に訴えかける。 そして彼女の視線が俺に移る度に祐は俺には悪戯な顔を見せて―― 愛「…力……酷いよ……」 (…げっ……つーか、何、真に受けて勘違いしてんだよっ。マジで俺がそんなことするとでも思ってんのか…っ…) 彼女の俺を見る目が痛い。 力「ばっ……おいっ!祐っ…おまえなぁっ…」 だけど、祐はまだその演技を続けて―― 祐「…愛梨……力から俺を守ってくれるよな?」 祐の迫真の演技に水月は完全に取り込まれてしまっていた。 愛「…うん……守るよ。祐を守る。力っ!ダメだよ?祐はね、今は安静にしてないとダメだってお医者さんにも言われてるんだからっ。いくら早く一緒に走りたいからって無理矢理そんなことしちゃダメ!」 彼女はそう俺に言い聞かせるように言った。 力「アホかっ!んなコト俺がするワケねーだろっ…」 どうしてこう水月は祐に取り込まれやすいのだろうか。 つーか、今は怪我人だし仕方がないのかもしれない。 だが、祐の肩をもっているようで俺は内心少し穏やかではなかった。 愛「…ホントに?」 力「ホントだってのっ!」 そう言い放った水月のその先。 そこには俺に意味深な視線を送っている祐がいた。 (えっ……あぁ……なんだ……そういう……ことか。そう…だな……)
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