その笑顔があれば

4/7
前へ
/605ページ
次へ
俺は祐の視線のその意味を理解した。 力「あー…バカらしー…。俺、もう帰るわ…」 愛「えっ……帰るって…」 水月に分からないように祐はその俺のセリフに頷いた。 そして俺もまたその祐の頷きに応え、水月に感づかれないように目で合図を送った。 力「昨日も寝てねーしな。悪りーけど、俺、こんなところに長居してる場合じゃねーんだよ。」 愛「こんなところって……」 力「祐も元気になってるの見たし?ん……後はおまえに任せたから。」 愛「……任せたって……」 力「ん……大丈夫だろ?それに俺がずっといてやるわけにもいかねーしさ。俺も忙しいんだよ、いろいろと。」 刻々と迫り来るその暫しの別れの時を俺は感じていた。 そして自分に言い聞かせていた。 (ほんの少しの間だけだ…きっと水月なら…) 力「…大丈夫……だよな?」 俺は真剣に彼女にその思いを放った。 彼女がジッと俺の瞳を見つめている。 愛「…分かってる。大丈夫だよ。力の大切な親友だもん。ちゃんと見てるから、私。」 (…親友か…ん……また……そんな風に呼び合える間に戻れるだろうか…) 力「ん……なら安心だな。頼むよ。」 愛「うんっ」 その屈託のない笑顔――― 今は……何も知らなくていい。 ……水月……… その笑顔を……俺はまた見られるのだろうか。 そして、今度会う時、彼女はその瞳を完全に俺だけに向けてくれる? 力「水月、俺、当分忙しくてこっちに帰ってこれねーと思う。けど、俺、頑張るからさ。だから、おまえも……」 愛「うんっ。400……頑張るよ。力の為に絶対っ!」 その言葉を聞いて俺は安堵した。 (…こいつは……きっと大丈夫だ……) そんな俺達の会話に祐がここぞとばかりに入ってくる。 祐「え?俺の為にも頑張って欲しいんだけどなぁ……こんな足だからさ……」
/605ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加