その笑顔があれば

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力「…って…はぁ?…つか、おまえなぁ!」 いくら西野がいつも俺のことを変態扱いするからって、こんな時に何だって俺を変態扱いするのだろうか。 愛「だ…だ…だって、変態って辞書で調べたら『普通とは違っているカタチや様子』ってあったよ?力、いろんな意味で普通じゃないもんっ。陸上だって一年であんな記録だすし、お茶席の振る舞いだって凄かったし…」 (…たく、またコイツはワケのわかんねーコトを言い出して……) 力「あのさ、それならもっと言い方ってもんがあんだろっ…」 愛「言い方って…例えば?」 力「ん…例えば?そうだなぁ……ん、『スゲーできる男』だとかさ。」 愛「…んー……」 (ってか、何考え込んでんだよ!?そこ、考えるところじゃねーだろっ) その時だった。 それまで俺たちのやりとりを見ていた祐が、 祐「…へぇ…お茶席……」 振り返ると、そこには興味深げな顔で俺を見る祐がいた。 祐「…力……茶道なんてやってるの?」 (…げっ……) 俺が茶道をしていることは実は誰にも言っていなかった。 GW中に偶然、茶席があったから泊まっていた水月にバレたものの、正直、あまり人に知られたくないと俺は思っていたのだが。 愛「そうなの。力、凄いんだよ。伯父さんの話だと小さい頃からずっと習ってたって。この前のお茶席なんて凄く格好良かったんだから…」 力「…っ……」 俺の気持ちなんて全く無視して水月は自分のことのように祐に自慢していく。 祐「…へぇ…ふぅん……力がねぇ…。そういえば、愛梨もやってたよね?」 愛「うんっ。お祖母ちゃんに教えてもらってた。あっ…そうそう……裏千家。力もなんだよね……って……あれ?力…?」 祐に俺の顔をニヤニヤと見られるのが耐えられなくなった俺は、そそくさとカーテンの外へ。 愛「…どこ行くの?」 水月が俺を呼び止める。 だけど、俺は振り返ることができない。   祐「…愛梨……力、恥ずかしがってんだよ…」 すると水月は俺の正面へと回り込んできて俺を覗き見た。 愛「…ほんとだ!顔がちょっと赤い……クスッ…」 力「…っ……」 
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