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ようやく二人きりになってホッとした俺達は顔を見合わせて思わず笑い合った。
力「…驚いたな……」
愛「ホント…クスクスッ…」
緊張が解けたのか彼女にも笑顔が戻っていた。
力「…ったく、あんな状況下でメシなんか喉通るかよ…なぁ?」
愛「…だね。じゃぁ、今から食べよっか…」
俺達は殆ど手をつけていなかった料理に手を付け始めた。
力「…ここまできてまた懐石かよ……勘弁してくれ…」
俺んちは旅館だからよく懐石は食わされている。
愛「そんな…贅沢な…。ん、力と結婚する人は大変だよね?」
(…結婚?)
その思わぬ言葉に俺は彼女の顔を見る。
愛「え?」
何も考えずに言ったのだろうか。
その意味を彼女は全く理解して無さそうだった。
力「…水月……俺はさ、おまえのカレーの方がよっぽどいいわ。」
俺は半年前に水月の家で彼女が作ったカレーを食った時のことを思い出していた。
愛「え?もう…何言ってんの?カレーなんて誰にでも作れるよ?」
力「…俺さぁ、フツーの家庭に憧れてんだよ…」
愛「…え?力のところだって普通の家庭……じゃないか……そっか…そうなんだぁ…」
まともにその話を聞いているのか聞いていないのか。
彼女は旨そうに懐石に手をつけていく。
力「…俺さ、おまえの料理…毎日食いてぇなぁ……」
それはかなり遠回しの俺のプロポーズ。
愛「…毎日?そだね。レパートリー少ししかないから今から練習しておかないとダメだね…」
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