想定外

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力「驚かせたかったんだよ。」 ピッチャーに転向してたら水月がどれだけ驚くだろう…… そう思って俺は今日という日まで言わなかった。 その驚いた顔を見たくて言いたくても我慢をしてきた。 愛「坂田先生から聞いたんだけど、中学二年生の時に肩壊したって…それホント?」 (坂田のヤツ、何でそんなコトまで知ってんだ?) 力「いや、正確には一年の終わりだな。おまえ、俺が軟式してたの知ってるだろ?」 愛「うん。」 力「小学生の時は俺、ピッチャーだしな。」 愛「えぇ?」 力「あれ?知らなかった?」 愛「…あ…え…うん…」 水月がそんな俺の事情を知っているはずがなかった。 小学生の頃、そして中学一年と言ったら水月は『祐』のことで頭がいっぱいだった。 祐のことしか頭になかったもんな。 力「…そうだよな……」 愛「…ぁ…ごめん…」 力「謝る必要なんてねーし。」 愛「だって…」 まったく、いちいちそんなんで落ち込んだり謝られてたら俺もたまったもんじゃない。 それでなくても今、水月はあの『祐』と同じクラス。 心配になる… 力「けどさ、今は俺のコト好きなんだろ?」 愛「うん…」 力「だったら謝る必要なんてねーよ。」 愛「…うん…ごめんね…」 また水月は俺に謝っている。 力「だから謝るなって…」 そう言って俺は彼女の唇を塞いだ。
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