選択

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これまで自分が親になるかどうかということを、 それほど考えずに生きてきた。 結婚に何を求めているのか、 自分でもはっきり意識していなかった。 いずれ自分にも、子どもができ、 子どもの成長を見守りながら、生きていく。 そのような思いも、漠然とはあった。 だけど、 僕が想像していたのは、子どもが小さいところだけ。 自分の子供と、 絵を描いたり、将棋を指したり、本を読んだりして過ごす。 やがて子どもは、小学生になり、 中学生になり、 高校に上がったころには、 すっかり可愛げなどなくなっているかもしれない。 僕は自分の子どもに何を求めていたのか。 子どもはいつまでも小さいままではない。 僕に子どもを育てきるだけの覚悟はあるのか。 僕は、夢を見ていたのではないだろうか。 いつまでも小さいままの子どもと、 穏やかな時間を過ごす。 現実にはあり得ない夢を、見ていたのではないだろうか。 子どもを持たないということは、 一つの選択であり、 子どもを持つことが、唯一無二の幸せの形ではないはずだ。 それでも、なんとなく、 僕は自分の子どもと、 共に暮らしていくのではないかと、 そう思っていた。 ここに来て僕は、 自分の認識の甘さを突き付けられた。 子どもを持つという選択、 当たり前だと思っていたそれは、 僕には少し、 荷が重いのかもしれない。
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