1.my boys (ジャック:7~9歳 ウェス:3~5歳)

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   ああ。言ってはいないだろうな。でもな、今のこの状況は刷り込みってやつなんだよ。お前にはハンターになる以外のレールは用意されていない。本当はレールだってまだ無いはずなのに。  そう言ってやりたかった。けど俺にはジャックを抱きしめることしか出来なかった。  不意にジャックの手に力が入った。しっかりと俺の背中に掴まっている。 「俺…… こんなことされたの、マムがいなくなってから初めてだ」  ウィルがそばにいなくて良かった。下手すると俺はヤツを撃ち殺していたかもしれん。 「エドの匂いってさ、不思議な匂いだよね」 「臭いか?」 「違うよ。機械の匂いと、紙の匂いと…… エドの匂いだ」 俺は笑った。 「結局俺か?」 「うん。エドはエドの匂いなんだ。エド」 「なんだ?」 「泣いたの、ダッドに言わないで」 「言わんよ」 「それから…… ダッドを怒らないで。俺の返事になんか悪いことがあったんならそれ、俺が悪いんだ。ダッドのせいじゃないよ」 俺はそれ以上何も言えなかった。小さな背中をぽんぽんと叩いた。 「お前は何も心配しなくていいんだ」 いつの間にかウェスリーがジャックの腰にしがみついていた。 「ジャック、お腹、痛いの?」 俺はウェスリーの頭を撫でた。 「ウェスリー、ジャックはちょっと疲れただけだよ」  この子にはどんなレールを敷くつもりなんだ? 俺にはもう、この二人は誰かの子じゃなくなっちまっていた。この二人は、ジャックとウェスリーなんだ。そしてウェスリーはウィルの子どもじゃない。ジャックの弟だ。俺はそこにデカい差を感じたんだ。  川は生憎濁っていた。先週降った雨のせいだ。ウェスリーは持って来た荷物の上に座らせた。ジャックは水筒を手に、途方にくれたような顔をしている。 「ジャック。もう水はほとんど無い。どうする?」 「帰るしか無いよ、エド。だってこれ以上無理だよ」 「そうか? ジャック、いろんなことを想像するんだ。もし本当にハンターになるなら、水が無いくらいでいちいち山から戻ったり出来んぞ。工夫する。何でも使う。引き返すのはな、相手を倒した時か、倒す手段が見つからん時だけだ」  俺は川のそばに穴を掘り始めた。少しずつそこに土の中を伝わって、川の水位と同じくらいの水が溜まった。水は穴から溢れ出したりしない。 「その辺りの乾いた木を拾って来い。細いやつがいい」 ジャックが薪になりそうな木を何本も拾って来た。太い木は俺が取った。残った木をジャックの前に置く。膝に当ててポキンと折った。 「やってみろ」 何本かが小気味よくポキンと音を立てて折れていく。  そのうちどう力を入れても折れない木が出てきた。 「それはだめだ、中が生きてる。だから折れないんだよ。これを生木って言うんだ。映画なんかで見ないか? 木を火に放り込む前に折るだろう? あれは木を確かめてるんだ、燃える木か燃えない木か。生木は燃えないんだ。それどころか体に悪い空気を出す」 「火はどうするの? マッチとかライター?」 「それがあればもちろんいいがな、無かったらどうする? 自分で作るんだよ」 ジャックは目を丸くした。 「自分で火を作るの!?」 「そうだ。さっき言ったろ? なんでも自分で考えて工夫するのさ」  
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