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直径1フィート(30センチ)くらいの浅い円形の穴を掘る。周りから集めてきた石をその縁に積み上げていった。ジャックもすぐ手伝い始めた。
「このくらいの大きさがいい。大き過ぎても小さすぎてもだめだ。作った火が消えないように周りに壁を作ってやるんだ」
3インチ(7.5センチ)くらいの壁が出来上がった。さっき折った木を石の壁の中に放り込んだ。なるべく空洞が出来るようにする。ジャックはその様子もちゃんと眺めていた。
次は火起こしだ。
「カラッカラに乾いた葉っぱを何枚も拾って来い」
その枯れ葉を揉んで崩した。崩れない枯れ葉は捨てた。
「これは火口だ。火を作る時に要る。大昔の人間はそうやって生きていたんだからな」
ナイフで自分のシャツを大きめに切り裂いて、その崩した枯れ葉を乗せた。
「弓を作ったか、作るのを見たことはあるか?」
「ダッドが何回か作ってた」
「なら要領は分かるな? 今のお前じゃ火は作れんだろう。だがそのうちその知識が必要になるかもしれん。これから山に来たらその度にやり方を見せてやる。よく見ておくんだぞ」
ジャックはしっかり頷いてウェスリーをそばに連れてきた。
――小さい頃から慣れておくのはいいことだ
その言葉を覚えていたらしい。
先に拾っておいた細長い木と蔓を出した。
「弓を作るのに使うのは生木だ。折れにくいからな」
ナイフで上下に小さな窪みを付けてしならせる。そこに蔦を巻いて弓に似たものを作った。
「普通の弓を作る時はうんと蔓を張る。だが火起こしをする時は蔓の長さに余裕をもたせる」
手首の太さ位の枯れ木をナイフで縦に割った。一つは平らな方を上にして、その端の方に窪みを作る。その窪みから端まで溝を作った。ちょっとした水溜りから水がちょろっと流れるようなイメージだ。もう一つは真ん中あたりに人差し指の先ほどの窪みを開けた。
もう1本、比較的真っ直ぐな人差し指ほどの太さの枝を拾う。葉や余計な枝は切り落とした。その先を丸めに削る。さっきの弓の蔓をその棒に巻き付けた。下に置いた木の窪みにその棒を当てる。
棒を立てて、もう一つの半分に割った木の窪みで上からしっかり押さえ、前後に弓を動かして回し続けた。
「エド、そんなんで火、作れんの?」
「まあ、見とけ」
それほど時間がかからず窪みから微かな煙が立ち始めた。ジャックが息を詰めてじっと見ている。棒を外すとそこに黒い粉が残っていた。
「これが火種を作るんだ」
先につけてあった溝からその粉を静かに枯れ木の上に落とした。手で扇ぐと少し煙が強くなった。周りの小さな枯れ葉の屑をその煙の上にまぶす。煙が強くなるのを確かめながら枯れ葉を乗せていった。
小さく息を吹きかける。本格的に黒い煙が上がって、ポッと中心が赤くなった。
「すげぇ!!」
そこに火が立ち昇った。
下の布に火が移らないうちに、穴の中に組んでおいた薪の中にその火を入れた。ウェスリーの小指より細い枯れ枝を何本か突っ込む。小さな火が大きな焚火になった。
ウェスリーは急に大きくなった炎に目を奪われている。ジャックは大興奮だ。
「何が大事なことか分かったか?」
即答が帰ってきた。
「ナイフとライターをいつも持っておくこと!」
涙が出るほど俺は大爆笑した。
「そうだな、その通りだ。どうやらいい勉強になったようだ」
ジャックは俺を見上げた。
「そして、何も無かったら周りをよく見ること」
俺はこの歳になって、やっと本物の弟子に巡り合った。俺の知ってること全部を教えてやりたい。
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