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「やった!!」
二人から同時に声が上がった。
「こりゃ凄い! 初当たりで良く釣った!」
小さなマスだ。しかし大きさじゃない。ウェスリーの顔はくしゃくしゃになるほどの笑顔だ。どうやらその顔を見ているジャックも自分のことのように嬉しいらしい。同じようにくしゃくしゃになっている。
「こりゃ、負けてられんな!」
そう言うと、二人は誇らしげにこっちを見た。
「おい、ジャック。お前もだぞ。たくさん釣らなきゃ腹は膨れん」
慌てて自分の釣り竿に走った。
結局マスが4匹、ピッカレルが2匹。まずまずの収穫だ。あの後ウェスリーにはもうかからなかったが、ジャックは2匹釣れた。
「ウェス、にいちゃんだからな、2匹になったんだよ。お前がにいちゃんならお前が2匹だったってことだ。でも最初に釣ったのはお前だもんな。凄いよ、ウェス!」
そんな言葉にウェスリーの顔には笑顔が戻った。いい兄弟だ。
塩をまぶして串に刺し焼いた魚は美味かった。ウェスリーは自分の釣った小さなマスを一口ジャックに分けた。
「すんげぇ美味い! ウェスの釣ったのが一番美味いよ!」
こんな二人の姿をウィルに見せたかった。親なのに子どもを知らないウィル。今は怒りよりも悲しみの方が強くなっていた。
(ウィル。二人はやっぱり子どもだよ。小さいんだ、どうか分かってやってほしい……)
石を崩して川水をかけて火を消した。
「後始末も大事なことだぞ」
教えてやりたいことがたくさんある。見せてやりたいものも連れて行ってやりたい場所も。ウィルが出来ないことを代りにしてやりたかった。
「明日は机の勉強だからな」
「どんなこと?」
まだ興奮が醒めていないジャックが期待を込めて聞く。だからニヤリと笑ってやった。
「字の書き方と、薬草についてだ」
とたんに顔が萎れた。
「薬草はいいけど…… やっぱ、字の練習は必要?」
「ああ。お前の進み具合によっちゃ、それで一日終わるかもしれんな」
「僕も練習する!」
「いい子だな、ウェスリーは。お前も読み書きを一緒に勉強だ。ジャック、ウェスリーに負けるなよ」
すっかりしょげたジャックを先頭にして帰り道を辿った。
「エド」
歩きながらジャックがしょんぼりした声を出す。
「確かさ、体2時間で机1時間だったよね」
「ああ、そうだな」
「今日何時間使ったっけ?」
「そうだな、明け方の5時からとしよう。今が2時だ。家について3時。ってことは10時間だ」
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