home (ジャック:24 ウェス:20)

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   小一時間してジャックは戻ってきた。 「俺さ」 そばに座り込んで表情の無い顔で話し出す。こいつは根は真面目なんだ。決してチャラケてなんぞいない。 「独立したみたいなんだ」 「独立?」 「ああ。先々週、親父が車くれた。俺、バカみたいに喜んじまってさ」 そう言って頭をかく。まるで恥ずかしい真似をしたかのように。 「そしたら5日前、朝起きたら親父がいなかった」  一瞬言葉を失った。俺はウィルが気に食わん。だが、さすがに息子を見捨てるとは思わなかった。 「連絡取れねぇし、エドんとこにも来てねぇみたいだし。これって、独立だよな?」  一瞬、返事が遅れた。 「俺、捨てられちまったか? そういや、ここんとこドジばかり踏んじまってたからな」 クツクツと笑ってる。 「ジャック」 「エド、車借りていいか? ビール買ってくる。俺、昨日全部飲んじまってさ、たまには親父の車以外の車にも乗ってみたいし」 ――あの車をあれほど欲しがっていたくせに。 「なぁ、貸してくれよ、車」 ――小さい時なら抱きしめてやれるのに。 「鍵は台所にある。持ってけ。多めに買っておけよ」 「OK、エド!」  車を見送って俺は座り込んだ。  ウィル。せめて何か言葉をかけてやることは出来なかったのか? どれだけあんたの背中を追っかけてたか知らんのか? やつはあんたの言葉が欲しかっただけなんだ。 『よくやった、ジャック』 『大人になったな、ジャック』 『一人前だ、ジャック』  たった一言でやつは変われたんだぞ。なんで放りっぱなしにして消えたんだ……  
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