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次の30分、同じ要領で俺の後を歩かせた。途中で長い蔓を取り、巻いて持った。
「それ、どうすんの?」
「後で使うんだよ。こういうのはいろんな役に立つ。手元に何もない時は何でも拾ったり取ったりしておくんだ」
そこからまたしばらく歩いた。疲れたとは言わんが、それは見て取れた。
弱音を吐かないことはいいことでもあるが、碌でもないことになることだって多いんだ。
「休憩だ」
「学校みたいだね。同じ時間に休み時間入れて」
「ああ、そうだよ。意味があるんだ。まず、注意力なんてそんなに長いこともてない。ちゃんと頭の中もリフレッシュするんだ。体のコントロールも出来るようになる。お前がもっと大きくなったら、1時間歩いて5分休憩を守るんだ。長いこと山ん中で歩くにはそういうことが大事なんだよ」
「エドって何でも知ってるんだね!」
ジャックの尊敬の眼差しを浴びて、俺は柄にもなく照れちまった。
(この子が可愛い)
そう思って、どうしちまったんだ? と俺は自分の頭を疑った。
次の30分。
「ジャック。お前が俺の前を歩け」
ジャックの顔にチラッと怯えが走った。俺も正直まだ早いような気はしてる。だが実戦が何よりも自分を鍛えてくれる。人の真似だけしてたって上達はせん。
「分かった」
ジャックはウェスリーを下ろした。
「なぜ下ろした?」
「ずっと負ぶってたからウェスはしばらく歩けるよ。だからその速さに合わせる。それにウェスが歩いてる方が、俺、ちゃんと周りに注意すると思うんだ」
的確に要点をついている。
「じゃ、思った通りに歩け。お前の後ろをついて行くよ。だから後ろは気にするな」
「それって、ハンデ?」
俺は大笑いしちまった。
「そうだな、ハンデだ。取りあえず後ろ以外は全部お前に任せる。迷うことがあったら止まれ。腹ん中が決まるまでは動くな。いいな?」
ジャックはウェスリーの手を引いて歩き始めた。必ず自分が半歩先を行った。教えて出来るこっちゃない。この子は磨けば光る宝石みたいなもんだ。
ずっとジャックにばかり気を取られていたが、後ろに付いて一つ分かった。ウェスリーは利口だ。ジャックの言うことをしっかりと聞く。
まだ5つだよな? 山に入ってからほとんど喋っていない。ただの無口か。普段のウェスリーを知らなかったらそう思ったことだろう。家の中でのウェスは結構喋るし甘ったれだ。それはジャックが甘やかすからなんだが。
けれど小さいながら状況を感じ取れる子どものようだ。兄貴の真剣さをちゃんと感じている。
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