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「あら、ごめんなさい」と、俺と同時に謝るのは年配の婦人だった。
白髪の一部に薄紫色のカラーを入れた夫人は上品ないで立ちとは逆に、気さくに話しかけてくれた。
「若い男の子が……珍しい。和菓子、好きなの?」
「え? あ、ああ、はい」
「そう? うれしいわね。ねえ」と、夫人は店員に顔を向けた。
「こんなに美味しくて、日本の伝統や技術が詰まってるんだもの。もっと若い子にも食べて欲しいわよね。でも若い子はやっぱり、あっちの方が好きだから……」
と、婦人は向かいの洋菓子店のフロアに目をやった。
なるほど、こっちは年配客が多いのに対して、あっちは若者も多い。
パッケージで若者の気を引くことが出来れば……
俺の黒目がぐるぐると動き出す。
「ありがとうございました!」
俺は彼女にお礼を言うと、驚く彼女の視線も構わずその場を後にした。
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