515人が本棚に入れています
本棚に追加
雑用係(ファウスト)
先の事件からランバートが復帰して三日、ファウストは予想外の展開に重く溜息をついた。
「なんじゃ、来て早々にうっとうしい。困り事などないであろう」
現在、宰相府執務室。こちらに上げなければならない報告書や懸念案件などを届けにきたところだった。
「ランバートはよく仕事をしておる。何をそんなに気にしておるのだえ」
「その仕事ぶりがなんともな…」
そう、そんな贅沢な悩みが今一番の懸念なのだ。
ランバートは先の事件の罰として、一週間ファウストの雑用をしている。ただこれは口実で、ファウスト自身が手元に少し置いておきたかったのだ。不安を拭う為の時間と距離が欲しかった。
ランバートは実によく働く。
整理されていない日々の報告書の整理整頓、散らばっている資料の整頓、書面の清書、会議に使う資料の収集や抜粋、関連書類の作成。
そればかりじゃない、掃除や換気、備品の補充に休憩時のお茶の準備まで。ほぼ完璧だ。
だがこうまで完璧だと、逆に劣等感を刺激される。ファウスト自身それほど事務仕事が得意だとは思っていなかったが、余計にそれを見せつけられるようなのだ。
「一週間も俺の雑用をしたら、あいつ俺の仕事を完璧に覚える」
最初のコメントを投稿しよう!