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あれが許した時に疼かなかったわけじゃない。触れて、唇と指で高めて、そうしていたら陥落だ。
数ヶ月分の理性を使い切った気がする。疲れ果てたあいつを抱いただろう。責務という理性を十分に取っ払ってしまった後だったから、あいつを慰めるだけでは終われなかった。
以前、風呂であれの中に触れた事があった。
あの時は純粋に体を綺麗にしなければ後が苦しいだろうと思ってのことで、疼く事はなかった。
それ以上に申し訳なかった。複数の男に嬲られる様も見た。その時には怒りしかなく、同時に自分の不甲斐なさを思い知った。
この時はまだ、部下だった。それが少しずつ形を変え始めたのは、いつだ。いつからこの垣根は薄く曖昧になった。
「あぁ、まったく!」
憎たらしい気持ちが溢れる。自分の弱さと理性のなさにだ。
どんなアホだ、こんなこと。ダメだと思っていたはずだ。
それでも一緒にいる時間が穏やかで楽しく安らいだから、ついつい誘っていた。あいつも拒まなかったから、いつしかそれが当然のような距離になった。
上り詰めるのは早い。昨夜の思いを肴にして、ファウストは荒い息を吐き出す。その後はどうしようもない自己嫌悪だ。
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