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この思いをどうにかしなければいけない。自分の悪癖は十分に理解している。もしも側に置くことを許せば、貪欲になる。縛り付ける。誰にも触れさせず、自由さえも奪ってしまう。
自分が嫉妬深い事は想像できた。だからこそダメなんだ。団長という立場を利用して、あいつを縛り意思を無視する事は簡単なんだ。
それに、耐えられない。記憶を引っ張り出せば簡単だ。
冷たい肌に開かぬ瞳、色を無くした肌と唇。あれを見たときに感じた心の凍るような思いは、二度とご免だ。
今回はたまたま間に合った。エリオットと、何よりランバートの生命力の強さに救われた。あの時救ってもらったのは、ファウストのほうだ。もしもあのまま失っていたら、一生苦しみが消えなかっただろう。
「ダメだ…」
怖い。特別にしてしまったら最後、終わりに怯え足がすくんで動かない。
自分は命じる事ができるか? あれに、戦場に出ろと。俺は言えるのか? 危険な任務にあたってくれと。
心が萎えて、体も萎える。そうして思うのは、やはり今の距離を守る事。側に置いても、触れない事。心を許してしまわない事。
それさえ出来ればこのままでいられる。今だって十分、安らげるのだ。親しい者に向けられるランバートの笑みをたとえ独占できなくても、その『親しい者』の中に自分が入っていられれば。
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