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第一章
「オコナー!!」
「うわっ……」
突然目の前が花でいっぱいになる。
色とりどりに咲き乱れる花に冬に咲く品種のものはない。
そこに違和を感じながらもただよう芳しい香りに癒される。
花の香りはいいものだ。
しかし問題はいまそのどちらでもない。
「キラン、人の顔の前にいきなりものを突きつけるなって言っただろ」
「ああ、ごめんよ!」
きょとんとこちらを見上げる顔に小さく嘆息する。
キランはあのストーカー男の名で、ここは俺の家の玄関だ。
詳しくはは司祭様の家を俺がそのまま使っている家。
教会へ向かおうと扉を開けた俺は突然顔面に花を突きつけられ危うく転びかけたのだ。
キランの頭の向こうには雪景色が広がっていた。
朝っぱらからこの極寒の中をよく凍らせもせず花束を持ってきたものだ。
「でもほら!綺麗だからオコナーよろこぶかと思って…」
「俺は女じゃないんだぞ」
「そんなの関係ないよ。僕はオコナーの好きなものを考えたんだ。だっていつも庭の花壇を寂しそうに見てたから」
確かに難しい顔で庭を見ていた覚えはある。しかしその時は自分のガーデニングのセンスのなさに悩んでいただけだ。
大好きなお花が咲かなくて寂しかったわけではない。
「はい!元気だしてオコナー!」
「いや…」
「会えてよかったよ!今日も大好き!」
「ああ…いや」
きらきらとした瞳で言われるとつい険しい表情をしてしまう。
これほどまっすぐな好意を受けるのは初めてだ。
正直かなり困惑しているし、彼の想いを素直に受け入れられるような柔軟性も持ち合わせていない。
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