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ご丁寧に隠れていた木の葉と同じ色のセーターに茶色のコーデュロイパンツを履いた青年は上目遣いに俺を見上げる。
「……その、お詫び、です」
俺の足元を見て何度か緊張したように目を瞬く。
もっと様子のおかしい男を想像していた俺はその小綺麗な外見に拍子抜けしていた。
この様子じゃ労働者というわけでもなさそうだ。
さほど気の強そうでもない青年はナイフなんか投げられて漏らさんばかりだったに違いない。
「中でお茶でも飲んでいけ。それで今日は帰れ。なんだか知らねえけど俺が見たいならこそこそせずに直接会いに来い。ナイフは…まあ、悪かったな。みんなには黙っててくれ」
少しばかり申し訳なくてかじかみはじめた手で髪をかく。
なにはともあれ、手に終えないような奴じゃなくて良かった。
青年はおどつきながらも俺の背中を追ってくる。
温かい紅茶をだして落ち着くまで少し雑談でもしよう。
ゆっくり話しを聞いて、こそこそつきまとうのだけは辞めてもらえばあとは神父としてできることをやってやればいい。
司祭様ならそうしただろう。
「オ、オコナー!」
すると教会の扉の前で青年が上ずった声を上げた。
「なんだ」
呼ばれた自らの名前に返事をする。
「話したいんだ。君は…嫌かもしれないけど」
そうしてもじもじと俯く青年に扉を開ける。
話しなら中ですればいいだろう。
わざわざ外でしなくても。
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