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『イルミネーション』の仕事は最大限に光り輝くことだ。
夜に最高の瞬間を、空間を演出することだ。
おれの仕事は、そのイルミネーションたちを綺麗に輝かせるための作業。
昔から培ってきた感覚で最高の距離感で設置をする。明るい真昼間の作業を黙々と続ける。
春には満開な木々も、いまは葉っぱひとつない。通りを歩くみんなからそっぽを向かれた時期に、おれはもくもくと裸の桜に、イルミネーションをとりつける。
おれも木と同化しているみたいに、だれもこちらを気にかける人はいない。ただの毎年の仕事というより義務になっていた。
この仕事が、おれの仕事が、何かに、誰かのためになっているのか。
たまに存在意義を見失う。『イルミネーション』と『イルミネーションを作るおれ』との世の中から求められている差に、なんとも言えない虚無感を感じる。
おれって、なんのためにこの仕事をしてるんだろうか。
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