俺は魔王を倒さなきゃいけない

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パーティーメンバーその1。剣士。 「なあ、盗賊!」 旅の途中で泊まった宿屋。 珍しく一人でまったりしていたところ、俺の部屋に剣士が訪ねてきた。 「どうした、剣士?」 嫌な予感がする。 「いやー、ちょーど良かった!実は王様から宿題出されてさー」 「宿題?なんだそれ」 「ほら、俺ってこの魔王討伐パーティーに選ばれるまで田舎の村で農民やってたじゃん?魔王を倒す旅にはある程度の一般常識や教養も必要!ってさー、いろんな勉強させられてんだ。これが難しくてほんと参っちまうよ。な、だからちょっと分かんねーとこ教えてくれねーか?」 「やだ」 「いーじゃん、盗賊ってずる賢そーだからぱっぱと教えてくれよ」 「微妙に誉めてねーな?めんどくせぇからやだ」 「そこを頼むよ~!俺じゃわかんねぇんだよ!」 「じたばたすんな埃立つだろ!……ったく、仕方ねーな。俺の分かる範囲だけだぞ」 「サンキュー!で、早速これなんだけど」 俺は剣士が見せてきた一枚の紙を覗き込んだ。 『トムはりんごを一個持っていました。メアリーが二個りんごを持って来て、二人で一個ずつ食べました。残りのりんごはいくつでしょうか』 「……」 「なー?難しいだろ?魔法使いくらい頭良くなきゃこんなの解けないって」 「…………残りは一個だろ、それ」 「おっ、さすが盗賊、すげぇ!答え二個な!なぁ、何で二個なんだ?トムはりんごを一個持ってて一個食ったんだろ?そしたらりんごがなくなるのは俺も分かるんだよ。でもここにメアリーがりんご持ってくるから難しくなっちまうんだよな~。メアリーがりんご持ってきて、メアリーもりんご食べて…あれ、メアリーもりんご食べたら残らなくね?」 こいつ…! 「なあ、剣士」 「何だよ急に良い笑顔貼り付けて」 「王様にはあとで俺から言っておくから。1+3=4、4-2=2。これを暗記しろ。な?」 「えーと、いちたすさんはよん、よんたす……んん、盗賊も呪文みてぇなこと言うなぁ…とりあえず分かった!ありがとな!」 俺は難しい顔をして部屋から去っていった剣士の背中を見送った。
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