俺は魔王を倒さなきゃいけない

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メンバーその2。魔法使い。 「盗賊?何ボサっとしてるのさ」 「ま、魔法使い」 勇者が閉めていかなかった扉から、魔法使いが顔を覗かせる。 「なあ、魔法使い。…トムはりんごを一個持ってて、メアリーが二個りんごを持って来て、二人で一個ずつ食べたら残りはいくつになる?」 「はぁ?二個に決まってるでしょ、そんなの」 当たり前だろ、と少し呆れた顔を見せる魔法使いに普段ならイラついただろうが、俺はほっとしてしまった。 「だ、だよな、良かった」 「盗賊、頭大丈夫?寒いから風邪引いた?」 「おお、俺も一瞬自分がおかしいのかと思いかけたぜ。恐るべし勇者パワー。な、魔法使いって勇者と同じ国出身だよな。教育制度ってどうなってんの?田舎行くと計算も危うくなんの?」 「僕の国の教育制度?どんな小さな村にも学校はある筈だけど。そこで算数とか文字とか基本は習えるよ」 魔法使いの言葉に胸の嫌な動悸が落ち着いていく。 良かった。 四則計算も体得させてもらえない原始村は存在しないんだ。 良かった。 「あとは手品の練習と漫才の実習も必須科目かな?」 否、前言撤回。 「いや、宴会芸が殆どだったかなあ…」 駄目じゃん。駄目な国じゃん。 「芸は身を助けるっていうからね。村が魔物に滅ぼされてもいつでも大道芸人としてやっていけるようにって何代か前の王様が」 「もっと教えるべきことがあるだろ!」 魔王を倒しても勇者と魔法使いの国から褒美をもらうのは止めよう。 面白宴会グッズを寄越されても困る。
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