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陽介はジャーから内釜を取り出すと、計量カップで米を二合ぶん入れた。冷蔵庫の隣にある小さなシンクに移す。蛇口をひねり、さっと水で洗って、ジャーに戻す。
炊飯ボタンを押そうとすると、伊藤が制止した。
「待て。〝お急ぎ〟で炊け」
「え、でも……」
まだ次のゲームまで45分ある。〝普通〟で炊いても間に合う。腹が減っているのだろうか。だが、飲食店を経営し、こんなデスゲームの最中でも〝食〟にこだわってきた伊藤らしくない。
「それは新米だ。もともと水分の含有量が多い。〝普通〟で炊いたら少しべちゃっとした仕上がりになる。これから俺が作るのは丼モノだ。汁のタレがあるから、ご飯の水分は少なめの方がいいんだ」
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