第一話 最後の晩餐は〝豚丼〟

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 子供の頃、父親が事業に失敗。新聞配達で家計を支え、大学へは奨学金で進学。サラリーマンを三年で辞めて起業。ロード沿いの潰れたファミレスに居抜きで入居するビジネスで財を築いたという。 「俺の人生はマイナスからのスタートだった。そして、成功したと思ったらまた失敗。借金まみれだ。それに比べれば、おまえは恵まれてるじゃないか。まだ二十七歳。いくらでもやり直しはきく」 「……そうですね」  二日目の〝デスばば抜き〟で伊藤のアイコンタクトに気づき、コンビプレイで勝利を手にした。以後、二人は阿吽の呼吸で死闘を勝ち抜いた。デスゲームでは味方がいると圧倒的に有利に立てる。 「でも、僕は伊藤さんみたいな人に生き残ってほしいです」  人としての魅力、リーダーシップ、逆境に負けない精神力……こんな地獄のような場でさえ理性を失わない冷静さ。伊藤がいなければ、ゲーム以前に、全員殺し合いで全滅していただろう。
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