第一話 最後の晩餐は〝豚丼〟

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 包丁の音を聞いていると、昔、母親が朝ご飯を作ってくれたことを思い出した。白いご飯、お味噌汁、かぶの浅漬け……どれも美味かった。涙がにじんできた。 「どうした?」 「いや、母親のことを思い出しちゃって」 「そうか。おまえは両親を亡くしたんだよな。事故か? 病気か?」 「五年ぐらい前に関西の方であった電車の脱線事故です。たまたま旅行に行って巻き込まれたんです」 「あの事故か……けっこう犠牲者が多かったもんな。そうか。ツイてなかったな」  いや、ツイてないと言えば、自分がいちばんツイていないだろう。こんなデスゲームで死にかけているわけだから。生き延びて一億を手にすれば話は別だが。
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