第一話 最後の晩餐は〝豚丼〟

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* 残り1時間 「いよいよ、生き残ったのは俺とおまえだけになったな」  静かな空間に男の声がした。 「そうですね。次のゲーム内容が明かされるまで――」  藤井陽介は壁に背中を預け、疲れた目で長針と短針からなる壁かけ時計を見る。12時を少し過ぎたところだ。昼か夜か定かではない。恐らく昼だろう。 「あと一時間ってところか」  打ちっぱなしのコンクリートの部屋。広さは大きな会議室といったところ。天井から蛍光灯のくすんだ光が落ちている。窓はない。外の音も聞こえない。湿気が強いので、地下室かもしれない。 「皮肉だな。生き残るつもりのない俺たちが最後まで残るなんて」  最初に口を開いた男――伊藤が苦笑交じりに言った。  グレーのスーツ姿。年齢は三十代の半ばぐらい。ネクタイはゆるめられ、胸元にのぞく白いワイシャツは赤い血でべっとり染まっていた。髪の毛が額に汗で貼りついてる。
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