第六話 地上300メートルの天空ディナーはカレー

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「パパ、このビル、まだ建設中なんでしょう?」  ホテルの周りは鋼材で仮囲いがされていた。まだ建築資材が残る正面ロビーを通り、エレベーターで最上階の展望レストランにやってきた。 「もうすぐ完成だ。今夜のレストランのプレオープンには、特別な会員だけが招待されている」 「でも、アイマスク着用なんて初めて」  玲奈が店内を見回す。  薄暗い広いフロアにテーブルが並び、キャンドルの炎が揺れていた。照明が落とされているのに加え、顔のアイマスクのせいで、他の客たちの様子はわからない。  このテーブルに案内される途中、横目で素性をうかがった。  どこか怪しげな客層だった。明らかにカタギではない人、老人と若い美人の組み合わせも見かけた。たぶん、女たちは自分と同じプロの愛人だろう。覆面で顔を隠したいのは、そのへんの事情と思われる。
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