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料理が運ばれてきた。しゅっとした顔立ちの男性ウェイターが、細い円筒のグラスを皿の上に置く。
「こちら、本日のアミューズ(つきだし)、ニンジンのピューレです」
赤いピューレの上に透明なゼリーが二層に重なっていた。ケーキ屋さんのフルーツゼリーを玲奈は思い出した。
スプーンでゼリーをすくい、口に運んだ。ひんやりした食感が口の中に広がる。
「ちょっとトマトの味がする。すっきりして食べやすい」
底にあるニンジンのピューレを食べる。今度は甘みが舌に伝わる。
玲奈は食べることが大好きだった。愛人業を続けているのは、もちろん金のためだが、他人の金でおいしいものを食べられるのも大きい。
「パパも食べてみなよ。おいしいよ」
西尾はめんどくさそうにスプーンを手にとり、たった三口でかきこむように食べ終えると、再び窓に目を向けた。
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