第六話 地上300メートルの天空ディナーはカレー

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 なーんか、心配だな。他に女ができたんじゃないでしょうね……。  女ができると、西尾は食事の好みが変わる。和食が好きな女なら割烹へ、エスニックが好きな女が女ならタイ料理屋へ通うようになる。  私をここに連れてくるってことは、まだ大丈夫ってことだろうけど……。  今、玲奈が住んでいる六本木のマンションは、一年ほど前、西尾の前の愛人と入れ替わりに入居した。  引っ越していく女と、マンションの玄関ですれ違った。 「どうせ、あんたも次の女に追い出されるわよ」  そう捨てゼリフを残し、女は去っていった。  捨てられた女の負け惜しみだと、当時は気にもかけなかった。玲奈はまだ若く、怖いものを知らなかった。  だけど、今ならわかる。西尾は同じ女と一年以上もたない。愛人になってそろそろ一年目。相手が潮時と考えていても不思議ではない。  玲奈は服が好きだった。東京に自分の店を持つのは昔からの夢だった。そのためには、西尾の金が必要だった。
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