第六話 地上300メートルの天空ディナーはカレー

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「みなさま、お食事はお楽しみいただけているでしょうか? 本日は当レストランのプレオープンにおいでいただき、ありがとうござます。これより会員様をおもてなしする、ささやかな余興をおこなわせていただきます」  余興? 有名な歌手でも呼んでいるのだろうか? K-popのスターだったりしたらうれしいんだけど。 「みなさま、窓の外をご覧ください」  男がマイクで告げた。  店内の片隅――東側の窓の近くで、おお、というどよめきが起きた。玲奈は、首を伸ばし、視線をそちらに向けた。  なに、あれ?……  アイマスクの下で、玲奈の眉間がいぶかしげに寄った。  窓の外に人がいた。30代ぐらいの男だ。デニムに長袖のシャツを着ている。屋上から照らしているのか、ライトアップされている。  最初、玲奈は高層ビルでガラス掃除をする業者かと思った。ゴンドラに乗って長い柄のついたモップで窓を拭くあれだ。  だが、様子がおかしい。
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