第六話 地上300メートルの天空ディナーはカレー

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 男は両腕を大きく広げ、窓の外にべったりと張り付いている。その姿は、アメコミのスパイダーマンを思わせた。  問題はその形相だ。頬を窓にくっつけ、歯を食いしばっている。男はじりじりと東側の窓を南に向けて横に移動していく。  続いて二人目が姿を現した。今度はスーツを着た五十年配の小柄な男だ。さらに三人目(若者だった)と続く。みな同じように、窓の外に張り付いていた。  あの人たち、何をやってるの? 窓の外にいるの? まさか――  奇妙なことがもうひとつあった。  ゼッケン?……  窓の外の男たちはマラソン選手などがつけるような白い布を胸につけていた。325とか、134といった番号が印字されている。  ステージの男がマイクで朗々と告げた。 「地上三百メートルのデスゲーム、エッジ・オブ・ウィンドウの開幕です! 参加者は窓の外にある、わずか10センチの縁(エッジ)を足場に、このレストランの窓の外を歩き切らなくてはなりません」
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