第六話 地上300メートルの天空ディナーはカレー

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 ステージ背後の白いスクリーンにプロジェクターが映像を映し出す。「325」というゼッケンをつけた男の上半身が写る。 「続いて選手紹介です。ゼッケンナンバー325番。職業は登山家。昨年、エベレスト登山を行う際、金融機関で借り入れた資金を返済するため、また再びエベレストに挑むため、今回のデスゲームに参加しました」  玲奈はガラス越しに男の顔を見た。精悍な肌は、浅黒く日焼けしていた。 「登山家ですので、当然ながら、高所での行動は慣れております。ただし、彼には重大なウィークポイントがあります。前回の登山で、左手の指をすべて凍傷で失っております」  それで玲奈は気づいた。参加者は誰もが吸盤のついた奇妙なグローブを両手にはめていた。窓にその吸盤を吸い付かせながら移動をしている。
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