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『あれは黒毛和牛のヒレ肉だ。一頭の牛から3%しかとれない極上の赤身だ』
玲奈はテーブルに目を落とした。メインのアントレ(肉料理)が置かれていた。
そのとき、シャトーブリアンですね、と別の声がした。
『添えられているのはトリフですか?』
声の主は、恐らくスーツ姿の経営者だ。
『さすがだね、社長。――田辺、なんで牛のヒレ肉がうまいか知ってるか? 牛の体の中でほとんど使わない筋肉だからだよ。使ってない肉は柔らかいんだ。おまえの肉も、たぶん食べたら美味いぞ』
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