第六話 地上300メートルの天空ディナーはカレー

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 地上三百メートル、ビルの外を吹き荒れる強風に交じって聞こえる男たちの会話。玲奈は信じられなかった。  なんなの、この人たち。今にも死ぬかもしれないのに、食べ物の話をしている? 『おまえら、賞金一億をゲットしたら何を食いたい? 俺はヤクのリブステーキだ。黒牛のヤクはチベットの名物料理だ。病みつきになるぞ』 『私はふぐの刺身(てっさ)です。ポン酢でね!』  中年男が冗談めかして言った。 『社長、あんた、関西の出身だろ? 鉄砲(てっぽう)みたいに当たったら死ぬ。だから〝てっさ〟。向こうの言い方だ』  はい、と返事がした。尼崎です、と。 『田辺、おまえはどうなんだよ?』  登山家の新城はニートの若者に訊ねた。
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