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地上三百メートル、ビルの外を吹き荒れる強風に交じって聞こえる男たちの会話。玲奈は信じられなかった。
なんなの、この人たち。今にも死ぬかもしれないのに、食べ物の話をしている?
『おまえら、賞金一億をゲットしたら何を食いたい? 俺はヤクのリブステーキだ。黒牛のヤクはチベットの名物料理だ。病みつきになるぞ』
『私はふぐの刺身(てっさ)です。ポン酢でね!』
中年男が冗談めかして言った。
『社長、あんた、関西の出身だろ? 鉄砲(てっぽう)みたいに当たったら死ぬ。だから〝てっさ〟。向こうの言い方だ』
はい、と返事がした。尼崎です、と。
『田辺、おまえはどうなんだよ?』
登山家の新城はニートの若者に訊ねた。
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