第六話 地上300メートルの天空ディナーはカレー

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 ラジコンヘリのリモコンのような機械を手に、男性のウェイターが近づいてきた。カメラを覗き込みながら、二本のレバーを操作している。  窓の外に何かが現れ、おおー、というどよめきが客席に起こる。  闇夜に浮遊する光る物体は、一種、深海を泳ぐクラゲに見えたが、玲奈はすぐにそれがドローンだとわかった。  男性ウェイターがリモコンを西尾に手渡し、二言三言、何かを告げた。  窓際のテーブルにリモコンが行き渡ったのを確認し、司会の男が告げた。 「では、ぞんぶんに、ドローンで参加者の進路を妨害(インターフェア)してください』  西尾の操るドローンが、先頭を進む登山家の頭上近くで静止する。リモコンの赤いボタンを押すと、下部に付いている噴霧器のようなものから液体が飛び出した。  窓に付着した白い泡が垂れていく。その下には登山家・新城のグローブがあった。 「今、ドローンから噴射された液体は、家庭用の食器洗い洗剤です。剥離成分が含まれているため、触れると非常に滑りやすくなります」
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