第六話 地上300メートルの天空ディナーはカレー

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 その様子を、玲奈は青ざめた顔で見ていた。  頭がおかしい……この人たち、人を殺して笑ってる……。 「どうした? 玲奈。顔色が悪いぞ。おまえもやってみるか、ドローン。ラジコンヘリみたいで楽しいぞ」  アイマスクをつけた頭が弱々しく振られる。  西尾がリモコンをウェイターに手渡し、皿の上の肉をナイフで刺した。 「この世は弱肉強食だ。強いやつが弱いやつを食らう」  肉を大きな口に放り込み、もぐもぐと頬を咀嚼させる。 「今の世の中、強者とは金のあるやつだ。金さえあれば、こういう場所で、余興付きで最高級のディナーを食べられる。おまえら若い連中の好きなネットとやらで、本物のデスゲームを見れるか?」  トリュフといっしょにヒレ肉を再び串刺しにし、口に運ぶ。赤ワインを飲み干し、げふっと息を吐く。 「金のために命を張る連中を見ながら食べるメシはことのほか美味い。薄い窓一枚をへだてて天国と地獄がある。地上三百メートルの天空で食べるディナーショー、それがこの世で究極のメシだ」
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