第六話 地上300メートルの天空ディナーはカレー

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 空中で機体をわしづかみにすると、若者は窓の下に消えた。一瞬の出来事だった。悲鳴も何も聞こえなかった。  ざわつくフロアで、玲奈はあっけにとられていた。なんてやつだ。ドローンを道連れに飛び降りた?   目の前では、額を窓に押しつけ、新城が顔をゆがませていた。悔しくても、窓を叩くことすらできない。ただ、歯を食いしばっていた。  西尾が、くく、と笑った。 「やるじゃないか、あのデブニート。玲奈、覚えておけ。人間ってのは、死ぬ寸前に本性が出る。それを見れるのも、このゲームの醍醐味だ」  窓の外にいる新城に目を向けた。 「この登山野郎、さっきはえらそうなことを言ってやがったが、こいつは前回のエベレスト登山で、仲間を見捨てて、一人だけ生き残ったんだ。なにが、パーティの仲間を見捨てないだ、正真正銘のクズさ」
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