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「仲間を……見捨てた?……」
「悪天候で山頂へのアタックを中止し、下山する途中で仲間が二人死んだ。こいつは――」
と、窓の外へさげすむような視線を流す。
「片手の指だけじゃなく、クラウドファンディングでかき集めた金も、人の信頼も、すべて失った。本当の負け犬は、社長やニートじゃなくてこいつなんだよ」
驚いて男を見つめる玲奈の前で、新城の体が再びじりじりと横に動きだした。
玲奈は無意識に椅子から腰を浮かし、あとをついていった。背後で西尾が何かを言ったような気がしたが、耳に入らなかった。
新城は両腕を大きく水平に広げ、窓の外を移動する。それは、絶壁に挑むクライマーそのものだった。
ぽつり、と雫がガラス窓に弾けた。その数は徐々に増えていく。
「おおっと、ここにきて、参加者にさらに悪条件が。雨が降ってきたようです」
ドローンはいったん屋上に退避させます、と司会の男が言い、残った一機が、ビルの上に消えていく。
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