第八話 眠気覚ましにはコーヒーとジェラートを

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 男が手首の腕時計に目を落とした。 「3日と15時間だな」  聞いただけでめまいがしそうになる。もう三日と半日、一睡もしていない。数分程度の仮眠もとっていない。  部屋の隅から、ちくしょう、と男のうめき声がした。  裕紀はのろのろと顔を振り向けた。色白の太った男が、ハサミで自分の太ももを刺していたベージュのチノパンが裂け、赤い血がにじんでいる。 「あいつはもうヤバいな」  ひげ男――清水がつぶやいた。
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