第八話 眠気覚ましにはコーヒーとジェラートを

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 近くにいた人間が転がるように逃げ出し、デブ以外の人間が部屋の反対側に集まった。 「2、1――」  清水が両手で耳をふさいだ。裕紀もまぶたを閉じ、耳に手を強く押し付ける。0のコールとともに、ヘッドバンドの赤い点滅が点灯に変わる。  バンッ! 花火のような乾いた爆発音が響いた。  デブの頭から黒い煙が立ち上り、顔に鮮やかな血がだらだら垂れる。両腕は体の両脇に垂れたまま、ぴくりとも動かない。  焦げた臭気を避けるように、裕紀は鼻と口を覆った。  これでまた一人……。  突然、拉致され、旅館の和室のような部屋に集められた名も知らぬ男女たち。床の間のAIスピーカーが告げたデスゲームの開幕。  ルールは一つ「眠ってはいけない」。  参加者の額に巻き付いたヘッドバンドが脳波を測定し、睡眠状態に入って5カウントまでに目覚めなければ、バンドに仕掛けられた爆弾が爆発する。  バンドを外そうとしたり、部屋から出ようとしたら、バンドは爆発する。このへんの設定は、漫画や映画で見たデスゲームの設定でおなじみだった。
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