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『いっぱい食べたら眠りましょうー。シエスタタイムでーす』
AIスピーカーの声とともに天井の照明が、互いの顔が見えるぐらいまで落とされる。横たわったら眠ってしまうので、裕紀は壁に背中を預けた姿勢を保った。
「あー、目が覚めるような濃いブラックコーヒーを飲みてえぜ」
隣の清水さんの声に、裕紀が反応した。
「俺はアイスですかね。こめかみがキーンって痛くなるような、キンキンに冷えたカップアイスを食べたいです」
とにかく会話を絶やさないのが大事だった。このヒゲの中年男と言葉を交わすことで、裕紀は3日半を乗り切ってきた。
「僕はグミかな――」
張りのある若い男の声が反対の壁から聞こえた。金髪に白いスーツ姿の男が壁に背中を預けている。でも、と言いながら立ち上がり、白いスーツの上着を脱ぐ。
「やっぱり眠気覚ましには、飲み食いよりこれですよ」
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