第八話 眠気覚ましにはコーヒーとジェラートを

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 *  5日目――。  裕紀は機械的にフォークを動かしていた。大きな丸皿の上には、山盛りになったスパゲッティのナポリタンがあった。デザートはバナナだ。  他の3人の参加者も黙ってフォークを口に運んでいる。3日目までは軽口も叩き合ったが、5日目に入ると、どんどん口数が減っていた。 「……なんかパスタ見てると、仕事のことを思い出しますね。よくショーケースに弁当を品出ししてました」  ぽつりと裕紀がつぶやいた。 「コンビニのバイトだっけ?」  隣にいる清水がよどんだ目を向けてくる。目の下のクマが濃くなっている(お互いさまだが)。 「ええ、大学を出て就職に失敗して……結局、大学時代のバイトをずっと続けてたんです。深夜のシフトに入るから、俺はけっこう重宝されてました」  フランチャイズだったので、オーナーがよく廃棄弁当を恵んでくれたのがうれしかった。 「……眠らないと、妄想や幻覚を見るって、あれ本当なんですかね?」
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