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「伊藤さんこそ、やりたいことはないんですか?」
「俺か? 俺は会社の借金を返して終わりさ」
伊藤は飲食店を経営していた。店舗を増やし、拡大路線に走った矢先に大腸菌の食中毒事件が発生。幼い子供が亡くなり、会社の評判はガタ落ち。倒産に追い込まれたという。
陽介の表情が陰る。伊藤には妻も子供も、残された従業員もいる。自分には友達も恋人もいない。そんな自分が生き残っていいのだろうか?
青年の心を読み取ったかのように、伊藤が言った。
「いいんだよ。俺は経営者だから、もともと高額な生命保険に入ってる。俺が死ねば家族には金がいく。問題は――」ふっと苦い笑みを浮かべる。「デスゲームで死んだ場合、保険金が下りるかだな」
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